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新型コロナで大打撃を受ける ~カネ儲け主義の歯医者たち~

【第2回】斎藤先生がこっそり教える 歯医者のホント~「歯科の駆け込み寺」~

■歯科衛生士に丸投げ?

 ただ、ここでひとつ疑問が出てくる。歯科医院側が本当に稼ぎたいのなら、メンテナンスよりも通常の治療のほうが、多くの場合、金額的に実入りはいい。にもかかわらず、メンテナンスに精を出すのはなぜなのか。

 通常の患者が減っているので、一連の治療が終わったあとも、リピーターになってもらわなければならないというのがひとつ。それ以外に、もうひとつ理由がある。

「歯科医師が通常の治療をやって、同時に別のユニットで歯科衛生士が別の患者さんのメンテナンスをやる。歯科衛生士をフル活用して、効率よく利益を上げようというのがリコールの目的のひとつになっています。メンテナンスに力を入れることについて非難するつもりは毛頭ありませんが、それを歯科衛生士に丸投げしているのは、やはりおかしい。利益至上主義と言われても仕方ないでしょう」

 そうしてカネ儲けに走った結果、今回の新型コロナウイルスの影響をもろに受けることになってしまったのだ。リコールに応えて予約を入れた患者の多くは、雑踏に出ていく不安や院内感染を危惧して、真っ先にキャンセルする。いまどうしてもメンテナンスを受けなければならない理由がないからだ。

 リコールの患者を数多く受け入れることを見込んでいる歯科医院は、歯科衛生士のシフトを組んでいるケースが多い。そのために、複数の歯科衛生士を抱えなければならない。ところが、当てにしていたリコールの患者の予約が相次いでキャンセルされたら、歯科衛生士に払う賃金が経営の大きな足枷となってしまう。現在まさに、そうした状況に陥っている歯科医院が少なくないのである。

 

 実は、斎藤歯科医師の歯科医院では歯科衛生士を置いていない。その理由をこう話す。

「うちでも十数年前まで歯科衛生士を雇っていたんです。思い出すだけでも腹が立ってくるので、詳しいいきさつは言いたくありませんが、彼女たちに重大な裏切り行為があり、以来、置かなくなった。そして、必要以上に儲けようとしなければ、歯科衛生士がいなくても十分、やっていけることがわかったのです」

 斎藤歯科医師は歯科衛生士がいた時代も、決して任せきりにすることはなかった。

「すべての患者さんを歯科医師が診るというのが基本だと思っています。もちろん、歯科衛生士がいれば、いろいろ補助を頼めるし、便利であるのは間違いない。でも、儲け第一主義の歯科医院は歯科衛生士を歯科医師の代わりになる戦力だと考えている。本末転倒もいいところです」

 メンテナンスにしても、歯科衛生士に任せきりにしていると、重大な問題を見落とすことがあるという。

「ある患者さんのケースで、メンテナンスをやってくれていた歯科衛生士に『歯がぐらぐらする』と訴えたのに、『歯の磨き方が悪いからです』と言って歯磨き指導をするだけ。以降も漫然と3ヵ月ごとにメンテナンスに通っていたそうなんです。3年後にやっと歯科医師に診てもらえたときには、症状が悪化していて、結局、歯を抜く羽目になった。こんな歯科医院に当たったら、患者さんにとっては悲劇ですが、ここまでひどくなくても、これに近い話はいっぱいある。患者さんをカネづるとしか見ていない経営者の姿勢の問題でしょう」

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『歯医者のホントの話』 斎藤正人/田中幾太郎

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斎藤 正人

さいとう まさと

サイトウ歯科医院

院長

1953年東京都生まれ。神奈川歯科大学大学院卒。極力、歯を抜かずに残す治療を心がけ、「抜かない歯医者」を標榜する。一昨年9月『この歯医者がヤバい』(幻冬舎新書)を上梓。


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